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白いドレス(オリジナル)
私の部屋の隅に、白いレースのドレスが飾ってあって、いつの日か、私はそれを着ようと思っている。そのドレスは亡き祖母のものだったが、母は興味がないらしく、すぐ私にくれた。私はドレスに毎日ブラシをかけていて、いつ着てもいいようにはしている。何か特別な日にと思っているけれど、そんな日は来そうになかった。
同じクラスの真由のことが好きで、日に日に切なく苦しいような気持ちになってくる。小学校の頃から一応友達で、たまに一緒に遊んだりする女の子だに過ぎなかったのに、大人びてくるに連れ、何か今までにない、私を惹きつけてやまない雰囲気が生まれ、私は彼女に包まれたいような、彼女を包んであげたいような、もっと互いを溶け合わせるような関係になりたいと望むようになった。
あの白いドレスを着て真由に会ったら、もう少し好きになってくれるかな。あるいは真由に着せてみてもいい。そうだ、きっと真由の方が似合う。あのドレスを絶対に着せたい。白いドレスに包まれた美しい真由を想像して、部屋の隅でためらいがちにそっと抱きしめたりするけれど、それは何とも虚しい行為だ。
その日、学校帰りに突然雨が降った。私は折り畳み傘を持っていたので、それをさして帰ることにする。玄関で困ったように立っているのは真由だった。私は、やや胸を高鳴らせて声をかけた。
「真由、どうしたの? 傘がないの?」
「うん……持ってこなかった」
「入っていく。送ってくよ」
そう言うと、真由の顔が明るくなった。
「ありがとう。入れて!」
雨の中を一つの傘に入って歩いていく。穏やかな雨じゃないし、折り畳みの傘は小さいので、二人ともそこそこ濡れてしまった。真由の家より、私の家の方が近かった。
「雨が止むまで寄ってかない?」
「うん、そうだね。そうする」
真由は屈託なく言う。家に上がり、真由は私の部屋に入るなり、ドレスに気づいた。
「わあ、素敵なドレス!」
私はこの機会を逃さない。
「ねえねえ、着てみて。雨で服も乾かさないといけないし」
「ええっ? それはダメだよ。こんないいドレス、私が着ちゃ悪いよ」
「いいから。真由に着てほしいんだ。お願い!」
「え?」
その返答を聞いてハッとする。着てほしいなんて、まるで何か下心があるみたいな言い方だ。実際あるのだけれど、私は何を答えていいか分からなくなる。
「あの……つまり……その……」
言いよどむ私に、真由は微笑してうなずいた。
「まあいいや。分かった。着てみる」
真由は濡れた制服を脱ぎ、ドレスを注意深く着た。予想通りとても似合った。真由を見てると、夢のようでため息しか出ない。
「どうかな?」
真由は私の前でくるっと回る。スカートの裾がきれいに広がる。
「とても……素敵だよ」
真由はそれから、鏡の自分を一通り見ていた。
「ありがとう、もういいよ」
そう言って、ドレスを脱ぎかけたが、何か無理な力をかけたのか、古くて布が弱っていたのか、どこか破れる音がした。見ると、袖が根元から取れかかっていた。
「あっ……」
真由の顔色が変わった。
「ごめんなさい……ごめんなさい、どうしよう……」
涙ぐんでうろたえる真由。私は思わず、そっと肩を抱いた。
「いいんだ。気にしないで。私が大切なのは真由だから」
真由はうなずくと、小さな声で私に訊いた。
「あのう、私のこと……好き?」
「……うん、好きだよ」
それから一ヶ月ほど経ったある日、私は真由と腕を組み。寄り添って歩いていた。
「あのね……あの日、わざとドレスを破いたんだよ。私はあなたを好きだったけど、あなたが私を好きか、自信がなかったから……」
あのドレスは、あの日以来補修し、畳んでしまってある。今度誰が、いつ着るのかは分からない。
同じクラスの真由のことが好きで、日に日に切なく苦しいような気持ちになってくる。小学校の頃から一応友達で、たまに一緒に遊んだりする女の子だに過ぎなかったのに、大人びてくるに連れ、何か今までにない、私を惹きつけてやまない雰囲気が生まれ、私は彼女に包まれたいような、彼女を包んであげたいような、もっと互いを溶け合わせるような関係になりたいと望むようになった。
あの白いドレスを着て真由に会ったら、もう少し好きになってくれるかな。あるいは真由に着せてみてもいい。そうだ、きっと真由の方が似合う。あのドレスを絶対に着せたい。白いドレスに包まれた美しい真由を想像して、部屋の隅でためらいがちにそっと抱きしめたりするけれど、それは何とも虚しい行為だ。
その日、学校帰りに突然雨が降った。私は折り畳み傘を持っていたので、それをさして帰ることにする。玄関で困ったように立っているのは真由だった。私は、やや胸を高鳴らせて声をかけた。
「真由、どうしたの? 傘がないの?」
「うん……持ってこなかった」
「入っていく。送ってくよ」
そう言うと、真由の顔が明るくなった。
「ありがとう。入れて!」
雨の中を一つの傘に入って歩いていく。穏やかな雨じゃないし、折り畳みの傘は小さいので、二人ともそこそこ濡れてしまった。真由の家より、私の家の方が近かった。
「雨が止むまで寄ってかない?」
「うん、そうだね。そうする」
真由は屈託なく言う。家に上がり、真由は私の部屋に入るなり、ドレスに気づいた。
「わあ、素敵なドレス!」
私はこの機会を逃さない。
「ねえねえ、着てみて。雨で服も乾かさないといけないし」
「ええっ? それはダメだよ。こんないいドレス、私が着ちゃ悪いよ」
「いいから。真由に着てほしいんだ。お願い!」
「え?」
その返答を聞いてハッとする。着てほしいなんて、まるで何か下心があるみたいな言い方だ。実際あるのだけれど、私は何を答えていいか分からなくなる。
「あの……つまり……その……」
言いよどむ私に、真由は微笑してうなずいた。
「まあいいや。分かった。着てみる」
真由は濡れた制服を脱ぎ、ドレスを注意深く着た。予想通りとても似合った。真由を見てると、夢のようでため息しか出ない。
「どうかな?」
真由は私の前でくるっと回る。スカートの裾がきれいに広がる。
「とても……素敵だよ」
真由はそれから、鏡の自分を一通り見ていた。
「ありがとう、もういいよ」
そう言って、ドレスを脱ぎかけたが、何か無理な力をかけたのか、古くて布が弱っていたのか、どこか破れる音がした。見ると、袖が根元から取れかかっていた。
「あっ……」
真由の顔色が変わった。
「ごめんなさい……ごめんなさい、どうしよう……」
涙ぐんでうろたえる真由。私は思わず、そっと肩を抱いた。
「いいんだ。気にしないで。私が大切なのは真由だから」
真由はうなずくと、小さな声で私に訊いた。
「あのう、私のこと……好き?」
「……うん、好きだよ」
それから一ヶ月ほど経ったある日、私は真由と腕を組み。寄り添って歩いていた。
「あのね……あの日、わざとドレスを破いたんだよ。私はあなたを好きだったけど、あなたが私を好きか、自信がなかったから……」
あのドレスは、あの日以来補修し、畳んでしまってある。今度誰が、いつ着るのかは分からない。
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表示回数 576 (since 2012/8/17)
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