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一歩を踏み出す勇気(オリジナル)

投稿者:tanaka
2014/01/03 22:57 [ 修正 ]
大事な一歩を中々踏み出すことが出来ない子と、その一歩を軽々と踏み越えてくる子のお話です。
今年もチマチマと投稿すると思いますので、よろしくお願い致します。
「はぁ……今日も言うことが出来なかった」
ただの一言。一秒、二秒あれば言い終えることの出来る台詞。
『好きです』――この一言をどうしても言うことが出来ない。
「私って、ここまで臆病だったの?」
自分の情けなさに呆れ、溜息が漏れてしまう。
私はもう少し勇気のある人間だと思っていた。
何の躊躇も戸惑いも緊張もなく、これくらいの言葉を言えると思っていた。
だけど実際は、中々言うことが出来ずにいる。
「ほんと、何にビビッてるのよ。結果なんて分かりきってるのに」
私が告白をした後の展開は分かっている。
受け入れてもらって、一つ先に関係に進む。
自惚れとかでなく彼女は――私の親友のあずみは、私のことが好きだ。
そして私も、あずみのことが好き。
だったら告白をして一歩先の関係に。親友ではなく恋人同士になればいい。
「分かってる。そんなことは十分、分かりきってるけど!」
言うことが出来ない。
肝心の一歩を踏み出すことが出来ない。その勇気が私には足りない。
「自分の情けなさが、臆病さが嫌になるわね」
意味もなく泣いてしまいたいくらいに、嫌になる。
「あずみ。私、貴女のことが好きなの……はぁ、ほんとコレを言うだけでいいのに」
誰もいない場所なら普通に言うことが出来る。
でも、あずみを前にすると言葉が出てこなくなってしまう。
「何で言うことが出来ないのよ」
心の底から一歩進んだ関係になりたいと思っているのに。
言わないと何も始まらないのに。私は何を恐れているのよ。
「あずみの方から告白をしてくれればいいのに……」
しかも、自分の責任をあずみに押し付けだしている。
私から一歩踏み出さないといけないのに、相手にその一歩を委ねようとしている。
「最低……私は最低だ」
「ううん。秋ちゃんは最低なんかじゃないよ」
「あず……み?」
「うん。あずみだよ」
私の大好きな笑みを浮かべながら、あずみが立っている。
「い、何時からここに……?」
聞かれてた? 私の独り言、全部あずみに聞かれてしまってた?
あの情けない呟きを全部!?
「秋ちゃんは何時から、居て欲しい?」
「それって……」
実は最初から聞いてたけど、私の好きに解釈をして心を誤魔化してもいいってことなの?
そして、やっぱり最初から全部聞いてたってことなの!?
「なんてね。今来たばっかりだよ」
「そ、そうなんだ……」
あずみの言葉にホッとしている私が居る。
想いを伝えるチャンスだったかもしれないのに、安心してしまっている。
もしかしたら一歩を踏み出すチャンスだったかもしれないのに。
私は。私は……ここでも勇気を出すことが出来ず、留まってしまっている。
「そういえば秋ちゃんに聞いて欲しいことがあるんだけど」
「私に聞いて欲しいこと?」
「うん」
何? 何を言うの?
「あのね、あずみは……私は秋ちゃんのことが大好きだよ」
私のことが大好き――でも、その言葉はきっと『友達』として『親友』としての好きだ。
だって、ここで。こんなタイミングで普通に告白をしてくるなんてないはずだから。
私が踏み出すことの出来ない一歩を、こんなに簡単に踏み出してくるはずがないから。
そうよ。そんな都合のいいことなんて……
「違うよ。私が言ってるのはそういう意味じゃないよ」
「じゃあ、どういう……」
ドクンと心臓が大きな鼓動を鳴らす。
息苦しい。一秒が果てしなく長く感じてしまう。
震えてる。小さく震えてしまっている。知らないうちに緊張してしまっているようだ。
「一人の女の子として。親友じゃなくて恋愛対象として『大好き』なんだよ」
「あ……」
踏み越えてきた。
私がどうしても踏み出すことの出来なかった一歩を、あずみは容易く踏み越えてきた。
普段通りの優しい声で、顔で、一歩を踏み出してきた。
「秋ちゃんは?」
「わ、私は……」
あずみが告白をして、次は私の番。
言わないと。ここで言わないともうこの先一生チャンスは来ないと思う。
踏み出すの。どんなに震えても、この一歩を踏み出さないといけない。
あずみが踏み出したんだから、私も勇気を持ってこの一歩を……
「わ、わわ……私、私も……私もあずみが…………」
言いたいのに。言わないといけないのに。
情けない私の口から素直に言葉が出てきてくれない。
「うん。ゆっくりでいいからね」
情けない私を見ても、あずみは優しい笑顔を浮かべたままだ。
怒ることもなく、急かすこともなくただ待ってくれている。
勇気を持つことが出来ない私を何処までも優しく待ってくれて……
「……ッ」
言う。絶対に言う。
私はここで一歩を踏み出して、あずみとの関係を進展させるんだ。
「すぅ……はぁ、うん」
あずみも私のことを理解してくれて、今の状態があるんだと思う。
あずみにばかり負担をかけるわけにはいかない。だから――
「私も……私もあずみが好き。一人の女の子として……だ、だから――だから私とその……つ、付き合って下さい」
言った。ついに言うことが出来た。
想いの丈をぶつけることが出来た。告白をすることが出来た。
ようやく大事な一歩を踏み出すことが出来たんだ。
「よしよし。よく頑張ったね、秋ちゃん」
「あっ」
抱き締められる。あずみに抱き締められている。
抱き締められ、そして優しく頭を撫でられている。
年齢は同じはずなのに、まるで親と子供みたいだ。
「ありがとうね秋ちゃん」
「ううん。私の方こそ、ありがとう」
「これで私達、恋人同士だね」
「うん……」
少し前までの関係とは違う。
具体的に何かが変わったわけじゃないけど、確かに、確実に変わっている。
踏み出すことの出来なかった一歩を踏み出し、歩みを進めたのだ。
「秋ちゃん、大好きだよ」
「……私も、あずみが好きよ」
「ふふっ。ちゃんと言えるようになったね」
「あずみのおかげで、ね」
情けないけど、あずみのおかげで言えるようになった。
これから先、あずみに同じように情けない姿を見せることになるかもしれない。
だけど、あずみと一緒ならきっと乗り越えていける。
一歩を踏み出すことが出来る。今回のように……ね。
ただの一言。一秒、二秒あれば言い終えることの出来る台詞。
『好きです』――この一言をどうしても言うことが出来ない。
「私って、ここまで臆病だったの?」
自分の情けなさに呆れ、溜息が漏れてしまう。
私はもう少し勇気のある人間だと思っていた。
何の躊躇も戸惑いも緊張もなく、これくらいの言葉を言えると思っていた。
だけど実際は、中々言うことが出来ずにいる。
「ほんと、何にビビッてるのよ。結果なんて分かりきってるのに」
私が告白をした後の展開は分かっている。
受け入れてもらって、一つ先に関係に進む。
自惚れとかでなく彼女は――私の親友のあずみは、私のことが好きだ。
そして私も、あずみのことが好き。
だったら告白をして一歩先の関係に。親友ではなく恋人同士になればいい。
「分かってる。そんなことは十分、分かりきってるけど!」
言うことが出来ない。
肝心の一歩を踏み出すことが出来ない。その勇気が私には足りない。
「自分の情けなさが、臆病さが嫌になるわね」
意味もなく泣いてしまいたいくらいに、嫌になる。
「あずみ。私、貴女のことが好きなの……はぁ、ほんとコレを言うだけでいいのに」
誰もいない場所なら普通に言うことが出来る。
でも、あずみを前にすると言葉が出てこなくなってしまう。
「何で言うことが出来ないのよ」
心の底から一歩進んだ関係になりたいと思っているのに。
言わないと何も始まらないのに。私は何を恐れているのよ。
「あずみの方から告白をしてくれればいいのに……」
しかも、自分の責任をあずみに押し付けだしている。
私から一歩踏み出さないといけないのに、相手にその一歩を委ねようとしている。
「最低……私は最低だ」
「ううん。秋ちゃんは最低なんかじゃないよ」
「あず……み?」
「うん。あずみだよ」
私の大好きな笑みを浮かべながら、あずみが立っている。
「い、何時からここに……?」
聞かれてた? 私の独り言、全部あずみに聞かれてしまってた?
あの情けない呟きを全部!?
「秋ちゃんは何時から、居て欲しい?」
「それって……」
実は最初から聞いてたけど、私の好きに解釈をして心を誤魔化してもいいってことなの?
そして、やっぱり最初から全部聞いてたってことなの!?
「なんてね。今来たばっかりだよ」
「そ、そうなんだ……」
あずみの言葉にホッとしている私が居る。
想いを伝えるチャンスだったかもしれないのに、安心してしまっている。
もしかしたら一歩を踏み出すチャンスだったかもしれないのに。
私は。私は……ここでも勇気を出すことが出来ず、留まってしまっている。
「そういえば秋ちゃんに聞いて欲しいことがあるんだけど」
「私に聞いて欲しいこと?」
「うん」
何? 何を言うの?
「あのね、あずみは……私は秋ちゃんのことが大好きだよ」
私のことが大好き――でも、その言葉はきっと『友達』として『親友』としての好きだ。
だって、ここで。こんなタイミングで普通に告白をしてくるなんてないはずだから。
私が踏み出すことの出来ない一歩を、こんなに簡単に踏み出してくるはずがないから。
そうよ。そんな都合のいいことなんて……
「違うよ。私が言ってるのはそういう意味じゃないよ」
「じゃあ、どういう……」
ドクンと心臓が大きな鼓動を鳴らす。
息苦しい。一秒が果てしなく長く感じてしまう。
震えてる。小さく震えてしまっている。知らないうちに緊張してしまっているようだ。
「一人の女の子として。親友じゃなくて恋愛対象として『大好き』なんだよ」
「あ……」
踏み越えてきた。
私がどうしても踏み出すことの出来なかった一歩を、あずみは容易く踏み越えてきた。
普段通りの優しい声で、顔で、一歩を踏み出してきた。
「秋ちゃんは?」
「わ、私は……」
あずみが告白をして、次は私の番。
言わないと。ここで言わないともうこの先一生チャンスは来ないと思う。
踏み出すの。どんなに震えても、この一歩を踏み出さないといけない。
あずみが踏み出したんだから、私も勇気を持ってこの一歩を……
「わ、わわ……私、私も……私もあずみが…………」
言いたいのに。言わないといけないのに。
情けない私の口から素直に言葉が出てきてくれない。
「うん。ゆっくりでいいからね」
情けない私を見ても、あずみは優しい笑顔を浮かべたままだ。
怒ることもなく、急かすこともなくただ待ってくれている。
勇気を持つことが出来ない私を何処までも優しく待ってくれて……
「……ッ」
言う。絶対に言う。
私はここで一歩を踏み出して、あずみとの関係を進展させるんだ。
「すぅ……はぁ、うん」
あずみも私のことを理解してくれて、今の状態があるんだと思う。
あずみにばかり負担をかけるわけにはいかない。だから――
「私も……私もあずみが好き。一人の女の子として……だ、だから――だから私とその……つ、付き合って下さい」
言った。ついに言うことが出来た。
想いの丈をぶつけることが出来た。告白をすることが出来た。
ようやく大事な一歩を踏み出すことが出来たんだ。
「よしよし。よく頑張ったね、秋ちゃん」
「あっ」
抱き締められる。あずみに抱き締められている。
抱き締められ、そして優しく頭を撫でられている。
年齢は同じはずなのに、まるで親と子供みたいだ。
「ありがとうね秋ちゃん」
「ううん。私の方こそ、ありがとう」
「これで私達、恋人同士だね」
「うん……」
少し前までの関係とは違う。
具体的に何かが変わったわけじゃないけど、確かに、確実に変わっている。
踏み出すことの出来なかった一歩を踏み出し、歩みを進めたのだ。
「秋ちゃん、大好きだよ」
「……私も、あずみが好きよ」
「ふふっ。ちゃんと言えるようになったね」
「あずみのおかげで、ね」
情けないけど、あずみのおかげで言えるようになった。
これから先、あずみに同じように情けない姿を見せることになるかもしれない。
だけど、あずみと一緒ならきっと乗り越えていける。
一歩を踏み出すことが出来る。今回のように……ね。
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