ごきげんよう ゲスト さん
ヘルプ・初めての方へ
百合こみゅ! > 百合投稿小説・ポエム > 百合リレー小説 > 百合リレー小説:和算蛇人版@最終更新:2012/07/15(日) 05:25頃(和算蛇人)
百合リレー小説:和算蛇人版@最終更新:2012/07/15(日) 05:25頃(百合リレー小説)

投稿者:和算蛇人
2012/07/10 02:42 [ 修正 ]
@最終更新:2012/07/15(日) 05:25頃
このサイトで行われている企画、『百合リレー小説』(※1)。
http://yuri-gl.com/relay
これを、僕の独断と偏見で再構成して、作品化(※2)したものです。
あくまでも基本的には、企画のストーリーに従っているつもりですが、二次創作です。
『和算蛇人版』なので、オリジナルとは異なる部分も、一部有ります。
企画ページが更新されてるのを確認次第、ここも更新していきます。
※1
『リレー小説は、1つの作品を作るというより、他の方と想像をつなげる遊び』らしいです。
僕はちょっと解釈が違ってました^^;
※2
※1の通りなので、作品化は微力ながら、僕がやってみる事にしましたw
あの日、私は少女だった。今朝、届いた花束を見て、私はその日のことを思い出していた。
確か……そう。
私より年上の女の人が花束を持っていた。
その女の人は私の方に近づいてきて、その花束を押し付けるようにして、私に差し出してきた。
突然の事に戸惑う私に、『貴女に、この花をあげるわ。私にはもう必要ないもの 』と言った彼女の顔は、とても悲しそうで、今にも泣きそうだった。
彼女が何故、そんな顔をしていたのかは、今になっても分からない。
花束をもっていた理由。必要なくなった理由。そして……見ず知らずの私に、その花束をくれた理由。
あの日以来、会うことも無かったし、これからもきっと、無いだろう。
分からないことばかりだが、ただ一つだけ、分かることがある。
今の私も、あの日の彼女の様に、悲しそうで泣きそうな、そんな顔をしている。
そして一つだけ、確信していることがある。
あの日と今日、二つの花束には、同じ意味が込められているという事だ。
奇遇な事に、あの日の彼女から渡された花束も、今朝届いた花束も、同じ組み合わせだった。
『秋名菊』(多感なとき・あせていく愛)。
『オシロイバナ』(あなたを想う・信じられない恋)。
『シオン』(遠い人を思う・あなたを忘れない)。
『プリムラ』(永続する愛情・うぬぼれ)。
これは推測に過ぎないが、あの女の人は、前者の意味で送った花束を、後者の言葉と共に送り返されて、泣いていたのではないだろうか。別れを告げるつもりでは無かったのに。ただ、想いを伝えたかっただけなのに、と。
不慣れな愛情表現は、想い人をえぐる刃となり、一つの縁(えにし)を断ち切った。
私の場合は花束では無かったけれど……返って来たのは、あの日と同じ花束だった。
そう、二つの花束には、同じ意味が込められていた。別れという意味が。
もう、あれから2年も経つ。
なのに何故、今頃この花束が届くのだろう?
そう思いつつも白木の階段を登り、自分の寝室へと戻った。出窓を勢いよく開くと、かすかに潮の香りの混ざった風が部屋を吹き抜けた。……あの人は今、どうしているのだろう。
あの縁は、今も切れたままなのだろうか。それとも……。悪魔の悪戯で切れた縁。天使の気まぐれででも、再び結ばれていると良いな。
これがマンガなら、最後はハッピーエンドだろう。私もあの女の人も、かつての幸せを取り戻せる。いつかきっと、こんな日々の事も笑いながら話せる日が来るのだろう。
だが現実は、そう甘くは無い。優しくないし、温かくない。幸せな奇跡など、そうそう起きてはくれないのだ。
残酷に不平等で、冷酷に無干渉。それが私の、私たちの生きる世界だった。
サワダーテ。
ポルトガル語で、『失われた幸福を、取り戻したいと想う、切なる願望』、という意味の言葉だ。
今私が抱いている、この想いはサワダーテだ。私はただ、あの娘と一緒に居たかった。ただ、それだけだったのに。
未練がましいとは思う。もう昔のこと、頭ではそう思っている。
でも、心まではそうはいかなかった。
あれから何度、『思っていても仕方がない』、と自分に言い聞かせたのかな。
どれだけ繰り返しても、えぐるような心の痛みは消えず、視界がかすんでいくばかりだった。
ふと、あの頃の写真を見たくなって、携帯を開いた。
見る度に辛くなるのに、どうしても消せなくて。プライベートフォルダに隠してる、夕陽色の記憶。
全てが満たされていた、あの頃の思い出。泡沫へと消え去った、幸せな夢の記録。
あの娘――姫月咲子(ひめづきさきこ)と、私――萌木陽花(もえぎようか)。
2年半位前――高校生活最後の日。二人で撮った写真の中で、私達は寂しそうに笑っていた。
さて、今日は二度寝するつもりだったけれど、どうしようかな。脳裏には、3つの選択肢が思い浮かんでいた。
1つ目は、朝食を摂るという事。あの花束を見てしまって、すっかり目が冴えてしまったから。
2つ目は、やっぱり二度寝するという事。初志貫徹、寝れる自信は無いけれど。
3つ目は……。今も通じるかは分からないけれど、咲子に電話かメールでもしてみるという事。……考えるだけでも、期待と不安で、手が震えてくる。
2つ目は論外だ。目が冴えているのに無理に寝るほど、私は自罰的ではない(罰は受けるべきかもしれないけれど――罪のない人なんていないのだから)。
3つ目も、今は却下するしかない。とてもじゃないが、朝飯前になんて軽い気持ちで、咲子と連絡を取る事は出来ない。もし出来るのならば、そもそも別れたりなんかせずに済んだと思う。
残ったのは1つ目のみ。だから私は、ひとまずご飯を食べることにした。
さて、何を食べようかな。
今日は親が出かけているから、何も無ければ自分で作るしかない。そう思って冷蔵庫を開けると、半分位使った、卵のパックが目に入った。
目玉焼きにでもしようか――そういえば。
咲子、醤油をかけた目玉焼きが、好きだったっけ。
私はいつもお好みソースなのだけれど、あまりにも咲子が勧めるものだから、一度だけ試してみた事が有る。
確かに美味しいのは美味しいのだけれど、私には合わないと思ったのを覚えてる。
それ以来、お好みソースの一択だったけれど……今日くらい、醤油にしてみよう。
今日はとことん、思い出に浸りたかった。
これを食べるのは、高3の時以来、実に3年ぶりとなる。
今も、あの時と同じ感想を持つだろうか。それとも、あの時よりも美味しく感じるのだろうか。あの時とは違い、不味く感じる可能性も有るけれど……考えたくない。
何はともあれ、私は目玉焼きを箸で分け、その中の一切れを口に運んだ。
の、だが。
「うっ」
思わぬ味に、思わず顔をしかめつつも、とりあえずは飲み込んだ。
そして、一人愚痴る。
「……はぁ。母さん、また容器間違えてるし。醤油刺しにめんつゆ入れないでって、いつも言ってるのに」
そう、醤油刺しに入っていたのは、母お手製のめんつゆだった。
母の好物の一つに、ソーメンが有るから、常備しておくのは別に良いのだけれど……こんなドジは勘弁して欲しかった、特に今日だけは。
まぁ、口に運ぶまで、気付かない私も、私なのだけれども。
→続く
確か……そう。
私より年上の女の人が花束を持っていた。
その女の人は私の方に近づいてきて、その花束を押し付けるようにして、私に差し出してきた。
突然の事に戸惑う私に、『貴女に、この花をあげるわ。私にはもう必要ないもの 』と言った彼女の顔は、とても悲しそうで、今にも泣きそうだった。
彼女が何故、そんな顔をしていたのかは、今になっても分からない。
花束をもっていた理由。必要なくなった理由。そして……見ず知らずの私に、その花束をくれた理由。
あの日以来、会うことも無かったし、これからもきっと、無いだろう。
分からないことばかりだが、ただ一つだけ、分かることがある。
今の私も、あの日の彼女の様に、悲しそうで泣きそうな、そんな顔をしている。
そして一つだけ、確信していることがある。
あの日と今日、二つの花束には、同じ意味が込められているという事だ。
奇遇な事に、あの日の彼女から渡された花束も、今朝届いた花束も、同じ組み合わせだった。
『秋名菊』(多感なとき・あせていく愛)。
『オシロイバナ』(あなたを想う・信じられない恋)。
『シオン』(遠い人を思う・あなたを忘れない)。
『プリムラ』(永続する愛情・うぬぼれ)。
これは推測に過ぎないが、あの女の人は、前者の意味で送った花束を、後者の言葉と共に送り返されて、泣いていたのではないだろうか。別れを告げるつもりでは無かったのに。ただ、想いを伝えたかっただけなのに、と。
不慣れな愛情表現は、想い人をえぐる刃となり、一つの縁(えにし)を断ち切った。
私の場合は花束では無かったけれど……返って来たのは、あの日と同じ花束だった。
そう、二つの花束には、同じ意味が込められていた。別れという意味が。
もう、あれから2年も経つ。
なのに何故、今頃この花束が届くのだろう?
そう思いつつも白木の階段を登り、自分の寝室へと戻った。出窓を勢いよく開くと、かすかに潮の香りの混ざった風が部屋を吹き抜けた。……あの人は今、どうしているのだろう。
あの縁は、今も切れたままなのだろうか。それとも……。悪魔の悪戯で切れた縁。天使の気まぐれででも、再び結ばれていると良いな。
これがマンガなら、最後はハッピーエンドだろう。私もあの女の人も、かつての幸せを取り戻せる。いつかきっと、こんな日々の事も笑いながら話せる日が来るのだろう。
だが現実は、そう甘くは無い。優しくないし、温かくない。幸せな奇跡など、そうそう起きてはくれないのだ。
残酷に不平等で、冷酷に無干渉。それが私の、私たちの生きる世界だった。
サワダーテ。
ポルトガル語で、『失われた幸福を、取り戻したいと想う、切なる願望』、という意味の言葉だ。
今私が抱いている、この想いはサワダーテだ。私はただ、あの娘と一緒に居たかった。ただ、それだけだったのに。
未練がましいとは思う。もう昔のこと、頭ではそう思っている。
でも、心まではそうはいかなかった。
あれから何度、『思っていても仕方がない』、と自分に言い聞かせたのかな。
どれだけ繰り返しても、えぐるような心の痛みは消えず、視界がかすんでいくばかりだった。
ふと、あの頃の写真を見たくなって、携帯を開いた。
見る度に辛くなるのに、どうしても消せなくて。プライベートフォルダに隠してる、夕陽色の記憶。
全てが満たされていた、あの頃の思い出。泡沫へと消え去った、幸せな夢の記録。
あの娘――姫月咲子(ひめづきさきこ)と、私――萌木陽花(もえぎようか)。
2年半位前――高校生活最後の日。二人で撮った写真の中で、私達は寂しそうに笑っていた。
さて、今日は二度寝するつもりだったけれど、どうしようかな。脳裏には、3つの選択肢が思い浮かんでいた。
1つ目は、朝食を摂るという事。あの花束を見てしまって、すっかり目が冴えてしまったから。
2つ目は、やっぱり二度寝するという事。初志貫徹、寝れる自信は無いけれど。
3つ目は……。今も通じるかは分からないけれど、咲子に電話かメールでもしてみるという事。……考えるだけでも、期待と不安で、手が震えてくる。
2つ目は論外だ。目が冴えているのに無理に寝るほど、私は自罰的ではない(罰は受けるべきかもしれないけれど――罪のない人なんていないのだから)。
3つ目も、今は却下するしかない。とてもじゃないが、朝飯前になんて軽い気持ちで、咲子と連絡を取る事は出来ない。もし出来るのならば、そもそも別れたりなんかせずに済んだと思う。
残ったのは1つ目のみ。だから私は、ひとまずご飯を食べることにした。
さて、何を食べようかな。
今日は親が出かけているから、何も無ければ自分で作るしかない。そう思って冷蔵庫を開けると、半分位使った、卵のパックが目に入った。
目玉焼きにでもしようか――そういえば。
咲子、醤油をかけた目玉焼きが、好きだったっけ。
私はいつもお好みソースなのだけれど、あまりにも咲子が勧めるものだから、一度だけ試してみた事が有る。
確かに美味しいのは美味しいのだけれど、私には合わないと思ったのを覚えてる。
それ以来、お好みソースの一択だったけれど……今日くらい、醤油にしてみよう。
今日はとことん、思い出に浸りたかった。
これを食べるのは、高3の時以来、実に3年ぶりとなる。
今も、あの時と同じ感想を持つだろうか。それとも、あの時よりも美味しく感じるのだろうか。あの時とは違い、不味く感じる可能性も有るけれど……考えたくない。
何はともあれ、私は目玉焼きを箸で分け、その中の一切れを口に運んだ。
の、だが。
「うっ」
思わぬ味に、思わず顔をしかめつつも、とりあえずは飲み込んだ。
そして、一人愚痴る。
「……はぁ。母さん、また容器間違えてるし。醤油刺しにめんつゆ入れないでって、いつも言ってるのに」
そう、醤油刺しに入っていたのは、母お手製のめんつゆだった。
母の好物の一つに、ソーメンが有るから、常備しておくのは別に良いのだけれど……こんなドジは勘弁して欲しかった、特に今日だけは。
まぁ、口に運ぶまで、気付かない私も、私なのだけれども。
→続く
コメント 0
表示回数 576 (since 2012/8/17)
表示回数 576 (since 2012/8/17)

コメント
まだありません